GTM(Go To Market:市場投入戦略)は、新しい製品やサービスを市場に導入するための計画です。ターゲット市場の決定や販売チャネルとプロセスの確立、マーケティング戦略の策定などの複数のステップから構成されています。
また、GTMはマーケティングにおける幅広い要素に関する戦略であるため、新規事業だけでなく、既存事業でも重要な内容です。
市場投入戦略 (GTM) とは?
市場投入戦略(GTM)とは、企業が新しい製品やサービスを市場に導入するための戦略のことです。商品やサービスの開発やプロモーション、顧客サポートなど、商品やサービスを提供するための一連の活動を包括的に考慮します。
GTMは、商品やサービスが市場に適切に参入し、成功するために重要な役割を果たします。
例えば、新しいスマートフォンで市場に導入する場合、GTMとして以下のことを考慮することが重要です。
- 市場分析
- 製品開発
- 販売チャネルの選定
- 価格管理
- プロモーション戦略
- 販促促進
- 顧客サポート
以上のように、スマートフォン市場で成果をあげるために考える戦略がGTMです。
市場のポジショニング争いが激化するなかで、企業が優位なポジショニングをおこなうための戦略であるため、GTMで成功すると大きな成果につながることも少なくありません、
GTMの成功は、商品やサービスの差別化や正確な市場分析、顧客ニーズの理解が重要です。
GTMとマーケティングプランの違い
GTMは、商品やサービスを市場に導入するための計画であり、マーケティングプランは、マーケティング活動を計画する全般の計画です。そのため、マーケティングプランにGTMが含まれるイメージです。
GTMは前述しているとおりの内容ですが、マーケティングプランは市場分析だけでなく、顧客管理や流通戦略も含みます。そのため、GTMをマーケティングプランとして扱うことは少なくありません。
GTMについてピックアップすることで、詳細な戦略を考えられるため、効果的なマーケティングプランの立案につながります。
GTMが必要なケース
GTMを考えることが必要であるケースは以下のとおりです。GTM戦略が必要となる場合の例です。
必要なケース | 概要 |
新商品やサービスの提供 | 新しい製品を市場に導入する際に、効果的なGTMを考える。市場調査、価格戦略、プロモーション、販売チャネルの選択などが含まれる。 |
新しい地域または市場への進出 | 新しい地域や市場に進出する場合、GTMを考える。市場分析、競合分析、地域の文化的側面の理解、販売戦略の設計などが含まれる。 |
既存商品やサービスの再発売 | 既存の商品やサービスを再発売する場合、市場調査、製品の再ブランディング、価格戦略、販売促進活動がおこなわれる。 |
新しい顧客セグメントへのターゲティング | 新しい顧客セグメントをターゲットにする場合、顧客ニーズの理解やコミュニケーション方法の立案、販売チャネルの選択などがおこなわれる。 |
既存の企業でも、市場は変化し続けるため、過去に同様の成功体験があったとしてもGTMを考えることが重要です。
市場の状況が一定の状況を保っていることは少ないため、市場に関わる活動をおこなう場合は、GTMを考えることで効果的なマーケティングをおこなえます。
GTMの策定手順とは
GTMの策定手順について解説します。手順は以下のとおりです。
- 目標を明確にし、問題を特定する
- ターゲットオーディエンスを定義する
- 競合分析とニーズ調査
- キーメッセージの決定
- バイヤージャーニーの把握
- マーケティングチャネルの選択
- 市場に参入し、アプローチの実施
- その他のプロセスを検討し最適化
1.目標を明確にし、問題を特定する
GTMを考える場合、明確な目標を設定します。GTMに関するさまざまな要素は、目標がなければ、具体的な戦略を考えることにつながりません。
例えば、高機能なスマートフォンの売上をあげたいなどの目標を考え、そのために問題とされる内容を特定します。高機能なスマートフォンであれば、バッテリーの持続時間やユーザービリティなど、顧客のニーズを満たすためのさまざまな問題を特定します。
目標を明確にし、問題を特定することで効果的なGTMの立案につながることが多いです。
2.ターゲットオーディエンスを定義する
商品やサービスを販売するために、ターゲットとなる顧客セグメントを明確にします。ターゲットのニーズや行動パターンなどを理解することはGTMを考えるうえで重要です。
例えば、以下のように考えます。
- どのような消費者が問題を抱えているのか特定
- 発信する商品やサービスで解決できる具体的な顧客課題の洗い出し
- 商品やサービス内容とターゲットが購入する価格のバランスを算出
ターゲットについて明確に定義してください。ターゲットの定義が明確であれば、GTMやその他のマーケティングにおいて、効果的な方法を見出せます。
3.競合分析とニーズ調査
商品やサービスを利用すると考えられる顧客のターゲティングを定義した後は、本格的な市場調査を始めます。
競合他社が提供している製品やサービスを調査し、自社の製品やサービスと比較して、差異や優位性を把握します。競合分析の主な目的は、市場のトレンドや競合環境を把握することで、自社の商品やサービスをより良くするための情報をえることです。
同時に市場のニーズや顧客の要望を調査します。自社の商品やサービスがどのような消費者の要望に応えているかを把握するとともに、消費者の課題把握し、それに対してどのように解決策を提供するかを考えます。
競合分析とニーズ調査は、GTM戦略の基礎的な要素であり、市場分析において不可欠なプロセスです。
4.キーメッセージの決定
キーメッセージとは、自社の商品やサービスに関する情報を伝えるためのメッセージです。キーメッセージを決めることで、どのような特徴や価値を持っているかを消費者に端的に伝えられます。
例えば、新たなスマートフォンで市場に参入すると以下のようないくつかのキーメッセージが考えられます。
- 他社では実現できなかった高機能スマートフォンで、さまざまな用途で利用
- 長期的に利用すれば、実質無料で利用でき、家計を助ける
- 現在使っているスマートフォンからケーブル1本で簡単にデータ移行可能
以上のように、キーメッセージで独自性をアピールしたり、ターゲット層のニーズに応える内容であることをアピールしたりします。
GTMの目的に応じたキーメッセージを考えてください。
5.バイヤージャーニーの把握
バイヤージャーニーとは、顧客が自社の商品やサービスを知り、購入に至るまでのプロセスです。商品やサービスに関心を持ち、購入意欲を高め、実際に購入するまでの一連のステップが含まれます。
バイヤージャーニーを把握することで、顧客が自社の商品やサービスを知るまでに必要な情報や提供するためのチャネル、顧客のニーズなどの購入意欲を高めるためのタイミングなどを理解できます。
6.マーケティングチャネルの選択
ターゲティングやニーズに応じて、マーケティングとして活用できそうなPR媒体の選択をします。SNSや検索エンジン、広告などから、PRをおこなうチャネルを選択してください。
例えば、競合が多い商品の市場に参入する場合と競合の多い商品の市場に参入する場合では、マーケティングチャネルが異なります。そのため、ターゲットオーディエンスの定義にもとづいたチャネルを選択します。
7.市場に参入し、アプローチの実施
市場に参入するための準備が整えば、戦略に応じてアプローチをおこないます。市場に参入した後も、結果からここまでのプロセスのフィードバックをおこない、GTMの分析を継続してください。
最初に成功することが重要ではなく、改善を繰り返して最適なマーケティングをおこなうことが重要です。市場参入後も分析を欠かさないでください。
8.その他のプロセスを検討し最適化
GTMは市場に参入するための戦略全般のことであるため、ここまでのプロセス以外にもさまざまな方法が存在します。そのため、市場の状況や顧客ニーズに応じたその他のプロセスを検討することも重要です。
例えば、B to Bであれば商品やサービスの購入権限が商談相手ではないことは少なくありません。その場合、市場に参入後に他の商品やサービスの提供につなげるために、購入権限をもつ担当者の分析をおこなうことなどが考えられます。
市場や顧客の状況に応じて、GTMのさまざまなプロセスを考えてください。
GTMの具体例
世界各地で利用されるスマートフォンの販売を考える場合、国や地域によって法律やニーズが異なるため、GTMを考えることが必須です。
その場合、特定の地域の市場を熟知して、世界で使われるための方法を模索する戦略を考える場合や最初から世界各地で使われるための方法を模索する方法などが考えられます。
現地の文化や需要に合わせたGTMを考え、競合他社との差別化につながるプロモーションをおこないます。状況によっては、供給バランスについても考えることも必要です。
GTMとして考える内容は幅広いため、ターゲットオーディエンスの定義や顧客ニーズと市場の分析に応じた方法を考えます。
GTMの指標として活用できるデータ
GTMでは、さまざまな分析が重要であるため、どのようなデータを利用するかを選択する必要があります。
GTMの指標として活用できるデータは以下のとおりです。
- ターゲット市場の人口統計データ
- 競合分析に関するデータ
- トレンドに関するデータ
- 過去に獲得した顧客データ
- 地理情報システム(GIS)データ
それぞれのデータについて解説します。
ターゲット市場の人口統計データ
ターゲット市場の人口統計データとは、ターゲットの年齢層や性別、所得レベルなどのターゲットのデータ全般です。
ターゲットオーディエンスの定義や市場分析をおこなうために必要なデータです。
例えば、年齢層が高い地域に向けた製品やサービスのGTMを策定する場合、ターゲット市場の人口統計データからその地域の年齢層構成を把握します。そのデータに基づいたプロモーションなどのさまざまな戦略を見出します。
競合分析に関するデータ
競合分析に関するデータとは、競合が提供している商品やサービスの特徴や価格、販売チャネルなどの情報です。
競合の戦略や市場動向を正確に把握し、自社の戦略に反映します。顧客のニーズや市場の状況が明確化することもあるため、GTMにとって重要なデータです。
トレンドに関するデータ
市場やさまざまなマーケティングチャネルにおけるトレンドに関するデータです。例えば、SNSでトレンドとなっているキーワードや世論調査における社会的なトレンドなどのデータなどを利用し、顧客のニーズを把握します。
商品・サービスの開発やマーケティングチャネルの選択で利用できるデータです。
過去に獲得した顧客データ
過去の獲得した顧客データは、GTMのさまざまなプロセスで利用できます。市場分析やニーズ調査では、過去に獲得した顧客データから仮説を考え、具体的な分析・調査が可能です。
GTMについてよくある質問(Q&A)
GTMについてよくある質問について解説します。
Q:GTM とはどういったもの?
新しい製品やサービスを市場に導入するための戦略です。市場参入前に行う市場調査やターゲット設定、マーケティングチャネルの選択などさまざまな要素を含みます。GTM戦略を適切に実行することで、製品やサービスの成功を促すことができます。
Q:GTMは、ビジネスにとってなぜ重要
新規事業や商品・サービスの売上向上を促進し、市場シェアの拡大や競争力の向上につながるため重要です、販売チャネルやプロモーション方法の最適化により販売効率の向上にもつながります。
Q:GTMで重要なことは?
目的・目標の明確化や市場・競合分析、マーケティングチャネルの選択が重要です。
また、GTMは実行中に改善をおこなうことを理解し、継続的に評価・改善することも重要です。
Q:GTMを成功させるために必要なスキルやツールは何?
GTM戦略を成功させるためには、マーケティングやデータ分析、チームワークスキルが必要です。また、MAツールやCRMなどのデータ分析ツールを使いこなすことにより、質の高いGTMを見出せます。
Q:GTMは、新興企業と大企業のどちらに適している?
GTM戦略は、新興企業と大企業のどちらにも適しています。新興企業にとっては、市場に参入し、早期に成功するために必要な戦略です。大企業にとっては新製品や新サービスの導入など、新規事業においても有効な戦略であると考えられます。
まとめ
GTMは新規事業や商品・サービスの提供をおこなう場合にとても重要な内容を多く含んでいます。そのため、GTMは質の高いマーケティングを考える場合に重要です。
さまざまなステップによってGTMを考えますが、柔軟な考えとさまざまな視点を持って考えてください。