アップセル・クロスセルは、既存顧客に対して関連性の高い商品やサービスを提案することであり、LTV(顧客生涯価値)を最大化できる手法です。
アップセル・クロスセルの考えを認識しておくことにより、新たなマーケティング施策を考えられます。
アップセル・クロスセルとは
アップセルとクロスセルは、ビジネスシーンで利用されることが多い用語です。セットで使われることが多いですが異なる意味であるため確認します。
アップセルとは
アップセルとは、顧客がすでに契約もしくは購入した商品やサービスなどのアップグレードを促すことです。
例えば、スマートフォンを過去に購入した顧客に対し、最新で機能性が高い高価なスマートフォンやサービス内容が多い保証サービスなどのアップグレード版を提案・契約することがアップセルです。
企業にとって収益を継続させる、もしくは増加させる効果的な戦略の1つです。同時に顧客にとってはより多くの付加価値を提供できます。
クロスセルとは
クロスセルとは、顧客がある商品やサービスを購入する際に、関連する別の商品やサービスを提案・提供するマーケティング戦略のことです。
例えば、顧客がテレビを購入する場合にクロスセルとして、対応するテレビスタンドやHDMIケーブルなどを提案・提供することができます。
クロスセルは、商品やサービスの組み合わせを通じて顧客により多くの付加価値を提供し、企業にとっては収益を増やす効果があります。
アップセル・クロスセルが注目される背景
アップセル・クロスセルが注目される背景には、以下のような要因があります。
少子高齢化により新規顧客獲得が困難
少子高齢化により、新規顧客獲得が困難になっています。人口が増え続けた時代は、需要も高まっていたため、商品を作れば売れるという時代でした。しかし、現在は人口減少やオンラインでのビジネスの競合が激化し、既存顧客の抱え込みや顧客満足度の向上が課題とされることが多いです。
そのため、アップセル・クロスセルによる購入単価の向上が、売上達成率を高めるために有効な手段とされています。
新規顧客の獲得はコストがかかる
新規顧客を獲得するには、関わりを持つために広告費や販売促進費など多くのコストが必要です。既存顧客は商品やサービスなどの理解があるため、新規顧客に比べてさまざまなリソースを削減し、商品やサービスなどの販売が可能です。また、既存顧客は新規顧客より成約率が高く、長期的に売上を伸ばせます。
アップセル・クロスセルによる新規顧客獲得のためのさまざまなリソースを削減し、既存顧客から継続的に成果を挙げられるため、注目されています。
LTVとアップセル・クロスセルの関わり
LTV(顧客生涯価値:Lifetime Value)は、顧客が企業と取引を続ける期間中に、顧客からえられる収益全体を算出した数値です。
アップセル・クロスセルは、LTVを最大化するための重要な手法の一つです。
既存の顧客に対して、機能が多い商品やサービスのアップグレードを促すアップセルや、既に購入した商品に関連する商品を提供するクロスセルをおこなうことでLTVを最大化できます。
アップセル・クロスセルの成功がLTVの数値に直接影響します。
アップセル・クロスセルでLTVの向上させる手法
LTV(顧客生涯価値)を最大化し、顧客収益性を上げるためのアップセル・クロスセルの手法について解説します。
顧客に適したアップセル・クロスセル商品を提供する
顧客が本当に必要とする商品やサービスをアップセル・クロスセルとして提供することで、顧客の満足度が高まり、リピート購入率の上昇が可能です。
顧客の購入履歴や行動などを分析し、顧客が今後必要となると考えられる商品やサービスをアップセル・クロスセルとして事前に提案します。
顧客を分析したうえで、適した商品やサービスの提案をおこなうため、LTVの向上だけでなく顧客満足度の向上にもつなげられます。
アップセル・クロスセル商品の購入の利便性を高める
アップセル・クロスセルでLTVを向上させるためには、商品やサービスの内容を向上させたり、プロモーション内容を改善したりすることが重要です。
既存顧客に対して新たな付加価値を提供することが重要であるため、アップセル・クロスセルをすることにより、顧客が満足できる内容である必要があります。
また、既存顧客の購買履歴から類似商品などをわかりやすく伝えるための施策の導入が必要です。
例えば、購入履歴がある顧客に対し、顧客の関心がありそうな商品やサービスなどをメルマガやDMでプロモーションしたり、WEBサイトで関連商品として表示したりすることなどが考えられます。
アップセル・クロスセルをおこなう際の注意点
アップセル・クロスセルは顧客の収益性をあげるために有効な手段ですが、注意すべき点があります。
- 顧客にとって本当に必要な商品を提案すること
- 顧客にとって負担とならない提案方法を考慮すること
- 商品提案が顧客に与える影響を分析すること
- 顧客のプライバシーを侵害しないこと
それぞれの内容いついて詳しく解説します。
顧客にとって本当に必要な商品を提案すること
アップセル・クロスセルは連鎖的に成果を上げるために効果的ですが、顧客のニーズに応えるものを提案する必要があります。
そのため、顧客のニーズを満たさない商品やサービスをすすめることは、信頼を損ねる可能性が高いです。
顧客の分析をおこない、ニーズに合わせた商品提案をおこなうことが大切です。
顧客にとって負担とならない提案方法を考慮すること
提案方法が強引だったり、しつこかったりすると、逆に顧客離れを招きます。そのため、顧客にとって負担とならない提案方法を選ぶことが重要です。
例えば、オンラインストアでは購入履歴に基づいた商品の提案をおこなうことができますが、過剰な広告表示やメールマガジンなどは顧客に嫌われる可能性があります。
顧客と適切な距離感を保ったり、顧客の状況にあわせたりした提案方法を考える必要があります。
提案が顧客に与える影響を分析すること
アップセル・クロスセルによって、顧客に与える影響を分析することが重要です。
商品やサービスを提案し、顧客が購入することによるメリットを分析し、さまざまな視点で説明してください。メリットとなる部分やデメリットとなる部分などを細かく伝えることで、顧客に与える影響を丁寧に伝えられます。
例えば、高スペックなスマートフォンをアップセルで提案するのであれば、顧客情報に基づいてどのように生活の質が向上するのかなどを伝えることなどが考えられます。
アップセル・クロスセルとして考える提案内容が、顧客にどのような影響を与えるかの分析をおこなうことにより、質の高い提案が可能です。
顧客のプライバシーを侵害しないこと
アップセル・クロスセルのために顧客の個人情報を不適切に収集・利用してはいけません。
顧客離れやさまざまなトラブルの原因につながります。個人情報保護法などに従って、適切な取り扱いを心がける必要があります。
アップセル・クロスセルを活用した戦略例
アップセル・クロスセルを活用した戦略例を紹介します。アップセル・クロスセルを活用したマーケティング施策を考える際に参考にしてください。
アップセルを活用した戦略例
アップセルを活用した具体的なマーケティング施策について紹介します。
パッケージのアップグレードを提案
過去に商品やサービスを購入している顧客に対し、アップグレード版を提案可能です。パッケージのアップグレードを提案することで、顧客はより多くの価値をえられ、企業も売上を向上させられます。
量のアップセルを提案する
同じ製品をより多く購入することで、単価を下げる仕組みを提案します。量のアップセルを提案することで、顧客は割引を受けられるため、顧客満足度を向上させられます。
サブスクリプションの提案
定期的に商品やサービスを提供するサブスクリプションモデルを提案し、状況に応じて無料から有料、有料から高機能で高価な商品やサービスの提案をします。
顧客はさまざまなリソースを削減した状態で、簡単に商品やサービスを受けられます。また、サブスクリプションの利用による割引や特典を付与することも効果的です。
クロスセルを活用した戦略例
クロスセルを活用した具体的なマーケティング施策について紹介します。
一緒に使われる商品・サービスを組み合わせる
クロスセルの基本的な戦略ですが、顧客が購入する商品やサービスをさらに利用しやすくするためのものを提案します。
例えば、スマートフォンを買った人にスマートフォンケースや画面保護フィルムの提案などです
一緒に使われる商品やサービスの提案は、単価が低いと成約率が高いですが、状況によってはアップセルにつなげられるチャンスを見出せます。
セット購入の割引適用
関連性の高い商品やサービスをセットにして割引価格で提供することで、顧客にとって魅力的な提案が可能です。
例えば、アプリケーションやソフトウェアをサブスクリプション型で提供することを考えます。他のアプリケーションやソフトウェアと併用することにより、さまざまな機能が応用できるものをセットにして、割引価格で提供することなどが考えられます。
過去の履歴を活用する
顧客の過去の購入履歴を分析し、その情報と関連性の高い他の商品を提案することが考えられます。MAツールを活用することにより、自動で提案可能です。
例えば、スマートフォンを過去に購入した顧客に対し、新型のWi-Fi機器などの提案が考えられます。
アップセル・クロスセルについてよくある質問(Q&A)
アップセル・クロスセルの内容でよくある質問について解説します。
- 商品購入時のアップセルとは?
- アップセルのメリットは?
- クロスセルをおこなうための準備とは?
- クロスセルをおこなうと顧客の迷惑になる?
- アップセル・クロスセルはどのような業種でおこなえる?
- ダウンセルとは
Q:商品購入時のアップセルとは?
アップセルとは顧客に、より高機能で高額な商品やサービスを提案することです。顧客単価をアップさせる販売方法であるため、LTVを最大化できます。
アップセルのターゲットになるのは、すでに商品やサービスを購入したことがある既存顧客、特定の商品やサービスの購入を考えている顧客です。
Q:アップセルのメリットは?
アップセルのメリットは、「LTVの最大化」「顧客単価の向上」「営業効率の向上」「顧客満足度の向上」などさまざまなマーケティングとしてのメリットがあります。
顧客が意識している自社の商品やサービスに、新たな付加価値をつけた提案をすることにより、顧客が1回に購入する金額を引きあげられます。
Q:クロスセルをおこなうための準備とは?
クロスセルのために、顧客の購入履歴の把握や顧客情報の分析などをおこなうことが重要です。また、提案する商品やサービスに関する情報を熟知しておくことは大前提です。
準備をしておくことにより、顧客のニーズに沿った関連性の高い商品を提案できます。
Q:クロスセルをおこなうと顧客の迷惑になる?
クロスセルが顧客にとって迷惑になるかどうかは、提供される商品やサービスが顧客にとって価値のあるものであるかどうかによって異なります。そのため、顧客分析と商品やサービスを提案することによる影響の分析などが重要です。
提供される商品やサービスが顧客にとって不要であったり、その提供方法がしつこいものであったりする場合、顧客にとって迷惑になる可能性はあります。
顧客のニーズに合わせた提案をおこなうことが重要です。
Q:アップセル・クロスセルはどのような業種でおこなえる?
アップセル・クロスセルはどのような業種でもおこなえます。提供している商品・サービス内容と顧客について分析をおこなうことにより、アップセル・クロスセルできる可能性を見出せます。
Q:ダウンセルとは
ダウンセルは、顧客が過去に購入した商品やサービスよりも低価格な商品を提案することです。購入意欲を引き出すために活用される手法として活用されます。例えば、スマートフォンを購入した顧客に、価格を抑えたスマートフォンを提案することなどです。
顧客の状況によっては、LTVを最大化できます。しかし、ダウンセルは顧客単価が下がるため、売上増加よりも顧客獲得の観点から利用されることが多い手法です。
まとめ
アップセル・クロスセルは、LTVを最大化し、顧客との長期的な関係性を築く上で非常に有効な手法です。
Q&Aで解説したとおり、業種を問わずアップセル・クロスセルを利用できるため、顧客分析や商品・サービス分析などをおこなうことで新たなマーケティング施策を考えられます。また、ダウンセルについて認識しておくことにより、アップセル・クロスセルのチャンスを見出せます。