NPSとは?アンケート実施のポイントを解説

NPS(ネットプロモータースコア)は、大きな成果をあげるために利用する数値であり、リピート率に関係します。

顧客満足度を表す数値の一つですが、一般的な顧客満足度よりも具体的であり、周囲の人間に紹介したいかどうかを確認するための数値です。NPSを確認することにより、効果的なマーケティング施策を考えられます。

NPS(ネットプロモータースコア)と算出方法

NPSの概要や算出方法について解説します。

NPSとは

顧客満足度を確認するための指標で、知人に薦めたいと思う度合いから算出するスコアです。そのため、NPSが高いと多くの人に薦めたいと思うほど満足度が高い商品やサービスであるということです。

    NPSを確認したい場合、以下のような調査を顧客に対して実施して調査します。

点数は3段階に分けられることが多く、上記のような調査であれば以下のように分けられます。

  • 0~6点:批判者
  • 7~8点:中立者
  • 9~10点:推奨者

批判者はネガティブな発信をする可能性のある顧客であると考えられ、否定的な口コミの8割はこの段階の評価をした顧客であるとされています。

中立者は商品やサービスの内容に満足はしているが、自らすすんで購入する熱量はない顧客です。そのため、リピーターとなる可能性は低いです。

推奨者はポジティブな発信を期待できる顧客であると考えられ、リピーターとなる可能性があります。知人に紹介という連鎖が繰り返されれば、大きな成果につながります。

NPSと事業の成長率には関係があるのではないかという調査結果が多くあり、NPSが高ければ高いほど、事業は成長する傾向があります。

NPSの算出方法

上記のような調査結果から批判者や中立者、推奨者の割合を算出し、推奨者と批判者の差がNPSです。

例えば、顧客100人に調査を実施し、以下のような結果であると仮定します。

  • 批判者(0~6点):30人
  • 中立者(7~8点):10人
  • 推奨者(9~10点):60人

批判者の割合と推奨者の割合に注目すると、批判者の割合が30%、推奨者の割合が60%です。推奨者の割合と批判者の割合の差であるため、60-30=30pt(ポイント)です。

NPSの基準となる数値は、業界や国民性によって異なりますが、日本の業界の多くはマイナスであることが多いとされています。しかし、Appleやコストコなどのようなアメリカで顧客が満足するサービスを提供している企業は50pt以上です。

市場や業界平均などから基準値を設定し、NPSのスコアについて考える必要があります。

NPSと顧客満足度(CSAT)の違いとメリット・デメリット

NPSと顧客満足度(CSAT)はどちらも満足度をあらわす数値ですが、満足度合いが異なります。顧客満足度は満足であると答えた顧客の割合を示す数値です。

NPSは知人に薦めたくなるほどの満足度を表す数値であるのに対し、顧客満足度は満足したかしないかを表す数値です。そのため、顧客満足度よりも具体的に満足度を表す数値がNPSであり、顧客満足度と包含関係であると考えられます。

NPSのメリットとデメリット

知人に薦められるかなどの具体的な質問で調査を実施するため、回答者の回答も冷静に判断されたものが多いです。また、推奨者や中立者、批判者などのようにポジティブな発信やネガティブな発信をおこなう可能性が高い層の割合を把握できます。

NPSを利用することにより、具体的なマーケティング施策を考えられたり、成果の予測ができたりします。

しかし、評価を調査するためのアンケートは、前述している内容で実施するため、回答者によっては回答しにくい場合も発生します。そのため、単純に顧客満足度を調べるアンケートよりも、回答が集まりにくいです。

顧客満足度(CSAT)のメリットとデメリット

顧客満足度のメリットは、アンケート内容も結果もシンプルであるため、回答が集まりやすく扱いやすいデータを収集できます。

商品やサービスの満足度を把握する方法はさまざまあり、購入までにいたるまでのシナリオを分割して、簡単なアンケートで満足度を確認できます。

満足度を確認するだけの簡単なアンケートであるため、リソース少なく継続的に実施することが可能です。

しかし、満足度という曖昧な表現で評価されるため、具体的なマーケティング施策を考える場合は他の要素と統合的に利用する必要のあるデータと考えられます

満足したと回答する顧客でも、リピーターとなる可能性を判断することは難しいです。アンケートが簡単であるがゆえに、不満を抱く顧客がアンケートに回答せず、不安を抱いていない顧客のみ回答するケースが発生するため高いスコアが算出されやすいことも特徴です。

NPS調査には2種類ある!それぞれの特徴を解説

NPSを調査する方法は、大きく分けてトラザクション調査とリレーショナル調査の2種類があります。それぞれの内容について解説します。

トランザクション調査

トラザクション調査は、商品やサービスなどを利用した直後に実施する調査です。主に商品やサービスに対する評価を確認します。

NPSが高いユーザー属性などを確認し、商品やサービスに対する改善などに活かします。商品やサービスの購入時・利用時に継続的に実施する調査です。

リレーショナル調査

リレーショナル調査は、企業やブランドの評価を確認する調査です。商品やサービスの評価だけでなく、顧客の問い合わせに対する対応やWEBサイトの使いやすさなどのさまざまな視点で評価してもらいます。

企業やブランド全体の評価であるため、定期的に実施することが推奨されている調査です。

NPS活用のポイント

NPSを活用する際のポイントについて解説します。

  • 業界や市場で比較する
  • 回答しない顧客が存在することの認識
  • アンケート調査を目的としない

それぞれの内容について具体的に解説します。

業界や市場で比較する

NPSは数値としてあらわれますが、数値に対する捉え方は、業界や市場によって異なります。そのため、比較対象は業界や市場の平均、競合です。マイナスの数値でも、業界や市場によっては低い数値でないことは少なくありません。

例えば、日本は国民性として0から10点で評価する場合、6~8点をつけることが多いため、マイナスの数値になる傾向があります。アメリカなどでは、過剰に評価する傾向があるため、プラスの評価になりやすいです。

マイナスだと悪いなどという判断ではなく、業界や市場、状況によっては競合と比較してください。

回答しない顧客が存在することの認識

アンケートは基本的に任意で回答してもらうため、回答しない顧客も存在します。商品やサービスに対する感想などを表立って示さない顧客のことをサイレントマジョリティなどと呼ぶこともあります。

そのため、NPSを確認する場合は一定以上の回答数を確保しなければサイレントマジョリティの割合が増え、信憑性のない数値が算出されることも少なくありません。

NPSを利用する場合は、全体の回答数が一定以上である必要があります。

アンケート調査を目的としない

NPSやアンケート調査は、マーケティング施策をより良くするための手段です。アンケートを実施してNPSを算出し、分析結果をさまざまなマーケティング施策にいかすフローまですすめてください。

NPSを正確に計測するための方法

NPSを正確に計測するためには、アンケートの質問内容が重要です。

以下の内容に沿ってアンケートを作成してください。

  • 顧客が周囲の人間に薦める可能性の有無を調べることを軸に作成
  • 顧客と信頼関係を築ける内容にする
  • 質問数は5問から7問が適正
  • 数値を選んだ理由を確認する
  • 満点をつけない顧客に向けて改善策を問う

アンケートは回答数を増やすことも重要であるため、1問目に簡単に回答できる数値評価の質問を設置します。数値評価について深掘りする質問を複数用意し、具体的な改善策を見出せる質問をおり混ぜるといいです。

批判的な評価を受け止めつつ、改善していくという質問の流れがあると、顧客との信頼関係構築につながります。

NPSの計測で重要なポイント

NPSの計測で重要であるポイントは以下のとおりです。

  • 軸は薦めたいと思うかなどの評価
  • 評価してもらいたい事項を明確にする
  • アンケートは回答しやすいように工夫する
  • 信頼関係を築く
  • アンケートを実施するターゲットを絞ることも重要

それぞれの内容について詳しく解説します。

顧客が薦めたいと思うかなどの評価が軸

前述していますが、NPSのアンケートは顧客が他の人に薦めたいかを調査することが目的です。そのため、顧客が煩わしいと思うような質問の多さや内容などは避け、必要な質問のみアンケートに掲載します。

また、氏名やメールアドレスなどの具体的な顧客情報を問う質問ではなく、記述内容を減らした年齢や職業などの簡単に回答できる質問だと回答率がさがらないです。

評価してもらいたい事項を明確にする

NPSには商品やサービス、企業についてなど、さまざまな評価に利用できます。そのため、NPSを確認したい事項を明確にすると、顧客にとっても回答しやすいアンケートを実施できます。

状況によっては、複数のNPSを調査できるアンケートもおこなえますが、基本的には一つの事項に対するアンケートを実施してください。評価する事項を絞り込むことにより、質問数を減らし、質の高い回答をえられることが多いです。

アンケートは回答しやすいように工夫する

顧客にとって回答しやすいアンケートの構成や内容である必要があります。

NPSのアンケートは顧客にとって直接的なメリットは少ないため、時間を要する内容や記述しづらい内容は避けるべきです。

そのため、顧客に負担が内容に回答しやすいアンケートを作成してください。

信頼関係を築く

アンケートを実施するのであれば、顧客との信頼関係を築けるといいです。

小さなことであれば、アンケートの最後に感謝を込めたメッセージを掲載するなどの方法。推奨者でない評価をつけた顧客に対して、どのように改善すればいいのかなどを問い、批判的な評価も受け止めて改善する姿勢を見せるアンケートも効果的です。

アンケートを実施するターゲットを絞ることも重要

NPSを計測する目的に応じて、アンケートを実施するターゲットを絞り込むと効果的です。しかし、回答数が少なければ正確な数値を算出できないため、一定数以上の回答数が期待できる場合に限ります。

NPSの算出やアンケートの実施は、マーケティング施策などの改善に活かすためであるため、正確なデータをえるためにターゲットを絞ることも考えてください。

NPSのよくある質問(Q&A)

NPSについてさらに理解を深めてもらうために、よくある質問について解説します。

  • NPSとは?
  • NPSと顧客満足度調査は何が違うの?
  • NPSの目標値は?
  • NPSの正確な数値を算出するための回答数は?

Q:NPSとは?

NPSとは、顧客満足度を表す数値であり、顧客が親しい人におすすめしたいかを基準として数値評価することにより算出します。

顧客にはお薦めしたいかを基準として、0点から10点までの11段階で商品やサービス、企業などを評価します。9~10点を付けた顧客を「推奨者」、7~8点を「中立者」、0~6点を「批判者」と分類されることが多いです。

それぞれの割合を確認し、推薦者の割合と批判者の割合の差がNPSです。

Q:NPSと顧客満足度調査は何が違うの?

NPSは親しい人にお薦めしたかを基準とした具体的な満足度であるのに対し、顧客満足度は満足しているかどうかだけをあらわします。

Q:NPSの目標値は?

多くの顧客を推奨者とすることが理想的です。

NPSの目標値は業界や市場などによって異なるため、業界や市場の平均値、競合などと比較して目標値を定めます。

Q:NPSの正確な数値を算出するための回答数は?

理想とする回答数は400件以上もしくは2,000件以上です。

400件以上であれば±5%程度、2,000件以上であれば±2%程度の誤差で信憑性のあるデータが抽出可能です。

Q:NPS いつから?

NPSは2003年にフレドリック・F・ライクヘルドによって発表された、具体的な顧客満足度を算出する方法です。現代では、さまざまな業界のアンケート調査に利用されています。

まとめ

マーケティングにおいて、他の消費者へお薦めしたいかの評価は売上を大きくするために見過ごすことのできない内容です。商品やサービスを提供する企業としては、多くの消費者へお薦めしたいと思ってもらうマーケティング施策を考える必要があります。

具体的にどのようなマーケティングをおこなえば良いかなどを検討するために、NPSなどのような顧客からの評価や感想などは重要なデータです。