イールドマネジメントとは?導入のポイントと事例を詳しく解説

ホテルや飛行機の予約は、時期や予約の早さで価格が変動します。これはイールドマネジメントといい、ホテル・航空業界などの供給量に限界があり、在庫を翌日に持ち越せない特徴のある業界で使われる経営方法です。

販売数だけでなく総計の利益の最大化に目を向け、顧客の需要を把握し価格を柔軟に変動させます。この経営方法は、導入までにしておくべきものがいくつかあり、それらを把握していなければクレームや売れ残りに発展する可能性もあります。

そこで、今回はイールドマネジメントの概要や考え方、導入する際のポイントなどについて解説します。実際の導入例についても解説しているので、ぜひ、参考にしてみてください。

イールドマネジメントとは

イールドマネジメントとは、収益の最大化を狙った経営方法です。ホテルや航空業界などの在庫に限りがあり、翌日に持ち越せないような特徴を持つ業界で使われています。

ホテルや航空業界では旅行シーズンや平日、休日など、さまざまな要因で需要が変動します。そのため、売り切れになることもあれば、大量に売れ残ってしまうこともあります。したがって、1回でどれだけの量を販売できるかが重要です。しかし、売れ残りを少なくするため割引額の高いクーポンを発券しても、収益は見込めません。かといって、価格を高く設定しても需要が少なければ売れ残ってしまいます。

そこで、収益を最大化するために使われるのがイールドマネジメントです。季節的要因や、大型連休などの時期などさまざまな過去のデータから顧客の需要を割り出し、販売価格や提供客室数、座席数などを管理します。それにより、顧客の需要と販売価格がつり合い、値段が高くても購入する顧客や値段が安いから購入する顧客があらわれ、収益の最大化が見込めるのです。

イールドマネジメントの歴史

イールドマネジメントの取り組みは、1970年代にアメリカン航空によって始まったとされています。当時、収益悪化に苦しんでいたアメリカン航空は航空券の販売数だけでなく、収益の最大化を図る取り組みを実施しました。この取り組みからアメリカン航空は収益悪化は改善され、そこからイールドマネジメントがほかの業界にも広まっていったと言われています。

イールドマネジメントの考え方

ここでは、イールドマネジメントの考え方について解説します。

イールドマネジメントは季節的要因や、大型連休などの時期などさまざまな過去のデータから顧客の需要を割り出し、需要に応じて価格を変動させる経営方法です。

そのため、顧客の需要の把握が最大のポイントとなります。航空業界を例にあげると、提供する座席を100席用意できたします。通常価格を10,000円にして、80席売れれば800,000円です。

この際、顧客の需要を考え、早く予約した顧客にたいして割引を行い(25%引き)、少々高くても当日に予約を取りたい顧客に割高の席(25%増し)を用意します。

このように価格設定を行うことで、顧客の需要を満たし90席売れたとしましょう。

・割引価格が30席:225,000円

・通常価格が40席:400,000円

・割増価格が20席:250,000円

すべて通常価格で売り80席売れれば、800,000円の売り上げですが、イールドマネジメントを行い、90席売れれば、売り上げは875,000円となり75,000円プラスになります。

しかし、分析した顧客の需要が正解でなければクレームがきたり、かえって座席が売れ残ってしまう可能性もあります。よって、価格設定は過去のデータから顧客の需要を定め、慎重に設定しましょう。

イールドマネジメント導入のポイント

ここまでの解説でイールドマネジメントの概要や重要性について理解できたと思います。今日のホテルや航空業界などでは欠かせないイールドマネジメントですが、実際に導入するには抑えておくべきポイントがあります。

ここでは、イールドマネジメントを導入する際のポイントを3つ紹介します。

・現状分析

・顧客分析

・需要の予測・価格プランの設定

現状分析

まずは現状の分析から始めましょう。たとえば航空業界であれば、売上や利益といったものから、空席数、客単価、リピート率など、さまざまな視点から現状を把握します。

このデータの集計は月単位で行っておきましょう。そして、過去2~3年間のデータを見返せば現状の課題が見えてきます。

顧客分析

次に顧客分析です。ここでは、自社を使ってくれている顧客の年齢や居住地、WebサイトやSNSでの口コミなどから顧客像をリアルにしていきます。

イールドマネジメントは顧客の需要に対して柔軟な価格設定をして収益の最大化を狙うことが目的なので、顧客の分析は重要です。

需要の予測・価格プランの設定

イールドマネジメントを行うには正確な需要の予測が必要です。ここまでで行ってきた現状分析や顧客分析から需要を予測し価格プランの設定をしましょう。

さきほどの航空業界を例に出すと、旅行や帰省のために早期予約するファミリーや大学生にむけた「早割」などで価格を下げつつ、多少高くても直前に予約したいビジネス層にむけて空席の確保をするなど、価格プランは詳細に設定しましょう。

イールドマネジメントの導入事例

イールドマネジメントを導入するまでのポイントについて、さきほど解説しました。ここでは、実際にイールドマネジメントを導入している業界の事例についてみていきましょう。

解説する事例は以下の3つです。

・航空業界

・ホテル業界

・テーマパーク

航空業界

ここまでの解説で何回か例にあげましたが、航空業界はイールドマネジメントを導入している代表例です。

イールドマネジメントを初めて導入したのがアメリカン航空で、現代のイールドマネジメントの原型を作った先駆けと言える存在です。規制緩和による収益悪化に苦しんでいたアメリカン航空は、これまで空席を減らすことにこだわっていましたが、空席率が一定の水準を超えたときに値下げをするシステムを導入したことで、収益悪化は改善されました。

日本の事例をみると、全日本空輸は2002年から搭乗率より1便当たりの売上高を重視し、需要予測システムを導入しています。

ホテル業界

ホテル業界もイールドマネジメントを導入している代表例です。季節や旅行シーズン、平日や休日で需要の変動が激しいホテル業界では、イールドマネジメントが深く浸透しています。

予約日から2か月前、3週間前、前日、当日などでそれぞれ価格が異なることや、早く予約をすると当日予約の半額以下で予約できる場合もあります。しかし、その代わりに部屋が決められていたり、払い戻しができなかったりなど制限を付けることで柔軟に価格を変動しています。

また、朝食や夕食とあわせ、魅力的なプランを作ったりなど、ホテルごとにさまざまな価格プランがみられます。

テーマパーク

テーマパークは、ホテルや航空業界とは違い、販売数があまり限定されてはいませんがイールドマネジメントは使われています。ユニバーサルスタジオジャパンでは、コロナウイルス拡大の中、PCR検査結果を提出すれば割引になるプランをもちいて、コロナ禍であっても一定の利益を出し続けています。

また、テーマパークでは来訪者は入場券だけでなく飲食や物販サービスも利用する可能性が高いので、どれだけ魅力的な入場券のプランを作るかを工夫しています。

まとめ

いかがでしょうか。今回はイールドマネジメントの概要や考え方、導入方法などについて解説しました。

イールドマネジメントは供給量に限界があり、在庫を翌日に持ち越せない特徴のある商品に使われる経営方法で、主に、ホテルや航空業界、テーマパークなどで使われており、収益の最大化が見込めます。

導入には現状分析や顧客の需要の分析が必要なため、それらを分析しているうちに、自社の把握してなかった課題など、新たな発見があるかもしれません。また、価格設定だけでなく、ホテル業界のように食事のプランを混合した予約など、他の要因と合わせることで、さらなる需要が満たせます。