MRRとは?SaaSビジネスで重要である理由や改善方法について解説

MRRとは、SaaSビジネスにおける重要な指標の一つであり、ビジネスの収益性や成長性を表します。

数値としての算出はとても簡単で、ビジネスの分析・改善に利用可能です。

MRRとは

MRR(Monthly Recurring Revenue: 月間経常収益)は、月々に継続的にえられる収益を表す数値です。

月々継続的にえられる収益を示すため、サブスクリプションビジネスにおいて、月々に継続的に得られる収益のことを指すことが多いです。

定期的な支払いがあるサービスの収益モデルで重要な指標であり、新規契約数や解約数、 プランのアップグレード数などの要因に基づいて変動します。

また、クラウド上で利用するソフトウェアを提供するSaaS(Software as a Service)ビジネスにおいて特に重要な指標であり、企業の成長を測定するための指標として広く使われています。

MRRの種類と算出方法

MRRにはいくつか種類があり、それぞれの内容と算出方法について解説します。以下のような種類があります。

  • New MRR
  • Expansion MRR
  • Downgrade MRR
  • Churn MRR

MRRの算出は以下の方法がベースです。

算出方法: MRR = 平均月額料金 × 顧客数

ベースとなる算出方法は、MRRのそれぞれ定義によって少し変化します。そのため、大まかに算出したい場合は、上記の計算方法で算出してください。

New MRR

New MRRとは、新規契約によってえられる月額継続収益です。

新たに獲得した顧客からの収益であり、顧客獲得戦略や営業戦略の成果を評価するための重要な指標です。

算出方法: New MRR = 新規契約者数 × 月額料金

新規契約者数と月額料金から算出します。例えば、新規契約2人でそれぞれの月額料金が1,000円の場合、New MRRは以下のように算出できます。

2(人) ×1,000(円) = 2,000

サブスクリプションビジネスやSaaSビジネスのように、月々継続的にえられる収益に関する数値であるため、毎月計算することにより、変化を確認できます。

Expansion MRR

Expansion MRRとは、既存の顧客からの月額収益の拡大分を指します。既存の顧客が追加のサービスや機能などを契約することによりえられる収益を表します。

例えば、既存の顧客が基本プランを契約しており、アップグレードプランへ変更して月額収益が拡大した場合の増収分がExpansion MRRです。

算出方法: Expansion MRR =  アップグレードする契約者数 × (アップグレード後の月額料金 – アップグレード前の月額料金 ※Expansion MRR > 0 

たとえば、先月1,000円のプランに加入していた顧客10人が2,000円の上位プランに変更した場合は以下のようにExpansion MRRを算出できます。

10(人) ×( 2,000(円) – 1,000(円) ) = 10,000

Expansion MRRは、企業が顧客満足度を高めて顧客ロイヤルティを構築し、長期的な顧客関係を築くために重要な指標です。

Downgrade MRR

Downgrade MRRとは、既存の顧客が契約しているプランやサービスなどをダウングレードしたことによって失われる月額収益です。既存の顧客が以前よりも低額のプランに移行した場合に生じる収益減少分です。

そのため、Expansion MRRと同様の計算方法で、算出結果がマイナスであればDowngrade MRRです。

算出方法: Expansion MRR <  0 のとき      Expansion MRRの絶対値 = Downgrade MRR

例えば、10人の既存顧客が月額2,000円のプランから月額1,000円の下位プランに移行した場合を考えます。

| 10(人) ×( 1,000(円) – 2,000(円) ) | = | – 10,000 |

  = 10,000

企業はDowngrade MRRを把握することで、顧客の利用状況を正確に把握し、顧客ロイヤルティの向上などの強化を図れます。

Churn MRR

Churn MRRとは、退会や解約などによって損失した収益分のことです。そのため、前述しているDowngrade MRRもChurn MRRに含んで考えられます。

算出方法: Churn MRR=契約していたプランの金額 × 退会・解約した顧客の数

例えば、既存顧客の10人が月額1,000円のプランを退会もしくは解約した場合は以下のようにChurn MRR を算出します。

1,000  (円)× 10(人) = 10,000

Churn MRRは、顧客満足度や顧客ロイヤリティを把握し、サービスや機能などの改善に利用できます。

MRRとARRの違い

サブスクリプションビジネスやSaaSビジネスで重要な指標として同じような意味をもつARRという用語があります。算出方法が似ていますが用途や意味が異なります。

MRRとARRは、どちらもSaaS企業にとって重要な収益指標であり、顧客の継続利用に基づく収益を測定するために使用されることが多いです。ただし、MRRとARRは異なる指標であり、以下にその違いを説明します。

MRRは月次の収益を測定するため、月単位で分析するために使われる数値、ARRは半年から1年単位での収益を測定するため使われることが多い数値です。

例えば、ARRを算出する場合、月額1,000円のプランを100人の顧客が契約しているとすると120万円(月額1,000円×100人×12ヶ月)です。

MRRはリアルタイムに近い形でビジネスの現状を把握するために使用される数値で、ARRは将来の成長やビジネス計画の策定のために使用される数値と考えられます。

SaaS Quicks RatioとMRRの関係性

SaaS Quicks RatioとはSaaS企業の健全性を測定するための指標の一つであり、SaaS企業の能力を示す数値です。

SaaS Quicks Ratioを算出するために、前述したMRRの各種を利用します。そのため、MRRはSaaSビジネスの重要な指標です。

SaaS Quicks Ratioについて解説します。

SaaS Quick Ratioとは

SaaS Quick Ratioは、SaaS企業の健全性を測定するための指標の一つであり、SaaS企業の能力を示すものです。

以下の方法で算出します。

算出方法: SaaS Quick Ratio   = (New MRR+Expansion MRR)÷(Downgrade MRR+Chum MRR)

New MRRやExpansion MRRのような収益の増加をあらわすポジティブな数値が増加すれば、SaaS Quick Ratioは増加します。

Downgrade MRRやChum MRRのような、収益の減少をあらわすネガティブな数値が増加すれば、SaaS Quick Ratioは減少します。

SaaS Quick RatioはMRRと密接に関係し、SaaSビジネスの健全性を測定する指標の一つであり、ビジネスの流動性を示すものです。

SaaS Quick Ratioの基準値

SaaS Quick RatioはSaaSビジネスの健全性を測る数値として、以下のような基準で考えられます。しかし、事業展開したばかりの場合は数値が安定しないため、ある程度軌道にのったSaaSビジネスでSaaS Quick Ratioは利用します。

  • SaaS Quick Ratio < 1:ビジネスとして衰退している
  • 1 ≦ SaaS Quick Ratio < 4:ビジネスは成長しているが新規顧客獲得・アップセルなどの取り組みを継続する必要がある。
  • SaaS Quick Ratio ≦4:ビジネスが安定的に成長している

SaaS Quick Ratioが1より小さい場合、収益の減少をあらわすMRRが増収をあらわすMRRより大きいときであるため、ビジネスが衰退していると考えられます。

増収をあらわすMRRが減収をあらわすMRRの4倍以上であれば、ビジネスとして安定していると考えられます。

MRR改善の方法

前述しているMRR4種を改善する方法について解説します。

New MRRの改善方法

New MRRは新規契約により、向上する数値であるため、新規契約を増やす取り組みが必要です。

  • 商談の機会を増やす
  • リード見込み顧客を増やす取り組みをおこなう(WEB集客、広告出稿など)
  • 商品・サービス内容の改善によるターゲティングの見直し

上記内容以外にも、契約数を増やすための取り組みがNew MRRの向上につながります。

Expansion MRRの改善方法

Expansion MRRは既存顧客の増収分をあらわす数値であるため、低い場合は顧客単価を上げる施策が不十分でることをあらわします。

そのため、改善する方法として以下のような取り組みが必要です。

  • 既存顧客が利用している商品やサービスのアップグレードを促す
  • 既存顧客が利用している商品やサービスと関連する商品やサービスを紹介
  • 顧客が企業に愛着をもつような取り組みをおこなう

サブスクリプションビジネスであれば、アップグレードによるメリットやそのほかのサービスと連携することによるメリットなどを継続的に発信するなどが考えられます。

また、顧客満足度の向上につながる取り組みをおこなうことで、顧客は企業に愛着を持ちやすいです。

Downgrade MRRの改善方法

Downgrade MRRが高い場合、顧客が商品やサービスに満足していないことや顧客の個人的な利用背景が影響しています。

顧客の経済的理由などの個人的な利用背景などはどうにもならないことが多いですが、商品やサービスへの満足度向上可能です。

顧客にとって重要であると感じさせる価値を提供することを重点的に考えます。継続的に利用される商品やサービスの内容であることが重要であるため、マーケティング施策や商品・サービスの改善を継続的に考える必要があります。

Churn MRRの改善方法

Churn MRRが高い場合、顧客が必要性を感じていないことが多いため、重大な問題があると考えられます。顧客離脱を防止し、顧客の解約率を減らすための施策が必要です。

商品やサービスの内容を改善したり、機能性の向上をしたりなどの取り組みが必要です。利用中の顧客が不満に思っている内容などを分析し、ビジネスにいかします。

例えば、解約時に解約の理由を任意で入力してもらったり、既存顧客へアンケートを実施したりするなどが考えられます。

MRRについてよくある質問(Q&A)

MRRについてよくある質問いついて解説します。

  • MRRとは何?
  • MRRはなぜ重要?
  • MRRの減少はどのような影響を与える?
  • MRR以外にビジネスの健全性を判断する指標はある?
  • MRRの向上にはどのような施策が有効?

Q:MRRとは何?

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、月々に継続的にえられる収益を表す数値です。SaaSやサブスクリプションビジネスなど、定期的に顧客から収益を得るビジネスモデルにおいて重要な指標の一つです。MRRの増加は、ビジネスの成長を示す重要な指標の一つとされています。

Q: MRRはなぜ重要?

MRRは、SaaSやサブスクリプションビジネスにおける収益の安定性や成長性を評価する指標として重要です。定期的な収益があることで、ビジネスの将来の予測が容易であり、ビジネスの成長段階を確認できます。

Q: MRRの減少はどのような影響を与える?

New MRRやExpansion MRRの減少、Downgrade MRRやChurn MRRの増加はSaaSビジネスに負の影響として深刻な問題と考えられます。

MRRの数値がよくない場合、SaaSやサブスクリプションビジネスの収益性や成長性に悪影響を与えます

Q:MRR以外にビジネスの健全性を判断する指標はある?

MRR以外にも、ARR (Annual Recurring Revenue:)やCAC (Customer Acquisition Cost)、LTV (Lifetime Value)などでビジネスの健全性を判断できます。

そのほかにもさまざまなデータからビジネスの健全性を判断できます。

Q:MRRの向上にはどのような施策が有効?

新規顧客の獲得やアップセル・クロスセル、継続的に顧客満足度を向上させることが重要です。

New MRRとExpansion MRRを増加させ、Downgrade MRRとChurn MRRを減少させる取り組みをおこなってください。

まとめ

MRRは、SaaSビジネスやサブスクリプションビジネスにおいて、収益性や成長性を表す重要な指標です。MRRをポジティブな数値に向上させるために、新規顧客や既存顧客の満足度をあげる必要があります。

継続的にビジネス内容を分析・改善をおこなうことにより、顧客へ商品やサービスなどへの愛着を抱かせられます。